みなさん、初めまして。2023年度から、京都芸術大学通信教育部陶芸コースの専任講師に着任しました、「かのうたかお」です。よろしくお願いします。

新人の講師が来たということで、名前を見て、まずはネットで検索された方もおられるんじゃないかと思います。で、出てくるのは怪しい風貌の写真ばかり。なんだこいつは?と思われた方も多いと思います。決して怪しいものではありませんので、まずは自己紹介を。

1974年、京都の生まれです。生家は陶磁器を生業としている家で、叶松谷(ご存じの方もおられるかもしれませんね)という窯元です。少年時代から、決して運動神経は良くないものの、走り回ったりイタズラしたり色々な事に手を出すのが好きな子供でした。その頃から時々、仕事をしている祖父や父の後ろで黙々と土を触って何かを作ったりもしていました。

そのまま小中高と、順調にスクスクと成長し、京都精華大学美術学部造形学科陶芸に入学し、陶芸を学び始めます。学び始めたはいいものの、大学生活を楽しみ過ぎて、部活やバイト、学業以外に力を入れている、そんな典型的な大学生でした。楽しい学生生活も4年目を迎え、モラトリアムをさらに楽しむために大学院を受験しようか、なんて考えていた時に、高校時代からずっと気になっていた『青年海外協力隊』の存在が改めて大きくなってきて、とりあえず応募して受験。結果は運良く合格で、それまでの自分の人生でも聞いたことのなかった西アフリカのニジェール共和国という国へ赴任することに。自分の中ではこの協力隊での2年半が大きな経験となりました。

任期を終えての帰国後から、実家の工房の一画を使わせてもらいつつ自分の制作をはじめるのですが、この時に、大学4年間で真面目に陶芸と向き合わなかったことを大いに後悔し、技術や知識など、必要な事を少しずつ身につけていきました。

自分の作品の制作や売り込みなどをしながら作家活動が始まっていきました。当時は自分の作品だけではなく、作家さんの制作のお手伝いや展示のお手伝い、窯焚きなどにも押しかけて行ったりしていました。そんな中、母校の京都精華大学からお声がけいただいて、助手になり、僕の教員生活への道が始まりました。その後は色々な大学や専門学校で非常勤講師の仕事を続けたのですが、陶芸の授業だけではなく、大きな意味でのデザインについての授業なんかも担当していました。

こういった様々な経験をしつつ、今年度より京都芸術大学通信教育部陶芸コースの専任講師に着任しました。

少し、作品の話もしておこうと思います。
作品は造形的な作品や日常使いの器など、様々なものを作っています。
その中でも、僕の代表作と言えるものが「天アリ」というシリーズです。壺の形をしたものは「壺中天アリ」、茶盌の形をしたものは「掌中天アリ」といった様に、対象によってタイトルは少し変わるのですが、この「天アリ」のシリーズが僕の作品としてよく知っていただいていると思います。このシリーズは、粘土ではなくシャモットを用いて作られている作品です。シャモットを焼き固める事で塊状のものとなっており、塊としてその形が何であるか、は認識できますが、外部と内部が絡み合い、不思議な造形となっています。社本が材料という事で、いわゆる陶芸作品とは違った表情になっています。
他にも、野焼きのシリーズや、蓄光素材を焼き付けたもの、陶にメッキを施したものなど色々と取り組んでいます。既存の価値観にとらわれない事や実験的な事なんかが大好きで、自分の作品の中にもそういった要素が含まれていると思います。

色々な事に興味を持って、色々な事に手を出して、失敗も多い僕ですが、僕だからできる様な考え方でこれからの陶芸コースを盛り上げていきたいと思っています。
まだまだ至らない事はあるかと思いますが、よろしくお願いします!