会員レポート

[会員レポート]「黒田村アートビレッジと私」

田村早織(2019年度 通信陶芸大学院修了生)
 

 私の大学院の修了研究は「野焼き」でした。きっかけは2017年卒制黒陶焼成実習で黒田村アートビレッジを訪れた際に、中野先生がトタン板を巻いただけの窯で作品を焼成しておられたことでした。「それで焼けるのですか?」「・・・どうやろう?」。 結果は生焼けでした。

 翌年大学院に進んだ私は同窓会の「楽制作会」に参加し再びアートビレッジへ。空気の供給を改良したトタン窯に再度作品を入れていただきました。点火から10分後、一気に燃え上がった窯からパン!パン!と作品が破裂する音が響きました。結果はとってもよく焼けていましたが、作品はバラバラでした。

 この爆発が私の陶芸人生におけるエポックメイキングな出来事になりました。自宅に帰った私はすぐに爆発した原因と改善点をレポートにまとめて先生に提出し、図書館やネットで野焼きの資料を集めて何パターンかの焼き方を提案、アートビレッジでできるのはどれかを質問しました。ちょうど2カ月後にアートビレッジで学部と大学院合同の黒陶焼成実習の予定があり、焼成するチャンスがあったからです。そして清水先生のご理解の下、中野先生と学友達の助けを借りて焼成した私の最初の野焼き窯は、拙い焼きながらも手応えのあるものになりました。実はその頃の私は、自分の作品は土で作品を作り上げた時が一番で、焼いたり釉薬をかけたりするほど魅力が無くなるといつも感じていたのです。それでも焼くことのメリットも手放したくないしともがいていた時に、野焼き焼成によって初めて魅力が増したと感じられる作品が焼けたのです。修了制作は「野焼き」しかないと心に決めた瞬間でした。

 しかしすぐに問題に直面しました。大学院の研究であっても個人でアートビレッジの利用はできず、大学でも自宅でも煙を出すことは許されない環境でした。研究しようにも野焼きをする場所がなく私が窮地に陥った時、現れた救世主が陶芸同窓会でした。

 研究、学習会目的限定で同窓会員が企画書を提出して同窓会が承認し条件をクリアーすれば、グループでのアートビレッジの利用ができるという規約があったのです。これは同窓会が数年にも渡って大学側に働きかけを続けてやっと認められたもので、私は先輩たちの努力の恩恵を受けて野焼き研究会としてアートビレッジを利用しての研究を続けることができ、無事に大学院を修了することができたのです。

 黒田村地元住民の方々のご協力を頂けていることも幸運です。煙が出る焼成の承認だけでなく、焼成に必要なもみ殻や、薪などの木材の提供までしてくださいます。大学施設としての管理や研究に対する助成も整った環境で、本当にありがたいことです。

 大学院修了後もこの研究会は続けさせていただいて、昨年私は野焼き作品だけで個展を開催することができました。さらに最近新たな研究仲間にも恵まれて、今後も仲間と切磋琢磨しながら可能なかぎり制作、研究を続けていきたいと願っています。黒田村に感謝!ビバ!アートビレッジ!です。

 

保護中: 「私と通信陶芸」嶋田ケンジ(通信・大学院2015年度卒業生)

保護中: 「私と通信陶芸」嶋田ケンジ(通信・大学院2015年度卒業生)

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保護中: 「湧水(ゆうすい)・霧島アートな旅」吉田瑞希さん(通学・院2016年度卒業生)

保護中: 「湧水(ゆうすい)・霧島アートな旅」吉田瑞希さん(通学・院2016年度卒業生)

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保護中: 「卒業制作—その後」中田晢夫さん(通信2016年度卒業生)

保護中: 「卒業制作—その後」中田晢夫さん(通信2016年度卒業生)

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「台湾〝アーティスト・イン・レジデンス〟レポート」田中哲也さん(通信陶芸コース2001年度卒業)

「台湾〝アーティスト・イン・レジデンス〟レポート」田中哲也さん(通信陶芸コース2001年度卒業)

「台湾〝アーティスト・イン・レジデンス〟レポート」
田中哲也さん(通信陶芸コース2001年度卒業)

2017年1月23日から3月31日までの約2ヶ月間、台湾にある新北市立鶯歌陶瓷博物館の招待を受け、作陶をはじめレクチャーやワークショップの開催、ギャラリーでの個展など、現地に滞在して活動する機会がありました。博物館では年に15名ほどの作家を招待しており、光栄にも私はその内の1人に選ばれたという次第です。

作品は、焼き上がると透ける陶土に蛍光顔料を施しLED照明を当てた「透ける器」、在学中から取り組んでいる「鉄と陶器を組み合わせたもの」、「新しい感覚の信楽焼き」を三本柱としました。

現地で作陶した「透ける器」作品は、陶芸家しかできない現代美術とは何かを考え、器自体に光や音、時間など、カタチのないものや目に見えないものを捉えた「光を盛る器」というのが制作コンセプトです。

もう1つの「鉄と陶器を組み合わせた」作品は、金属やボルト&ナットで繋げていくことで、窯の大きさの制限から解放された今までにない陶芸を目指したものです。

制作した作品は博物館に寄贈するとともに、3月の最終週には台北市内のギャラリーにて、台湾初の個展「田中哲也的全(田中哲也の全て)」を行いました。個展開催にあたっては、なにが受け入れられるかわかりませんでしたが、日本から送った「新しい感覚の信楽焼き」作品と合わせ、自分の持っているスタイルをすべて見せることにしました。

ギャラリーのオーナーをはじめ台湾には親日家が多いせいか、私の作品についても現地の陶芸作家から一般の方々まで、熱心かつ興味をもって受け入れられたようでした。

これまで闇雲に作家活動を続けてきた面がありましたが、今回の滞在と個展を通して、
〝少しぼやけてた輪郭がクリアになった〟と自分自身で感じています。自分の作陶の方向性が解り始めたというところです。

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新北市立鴬歌陶瓷博物館
http://jp.ceramics.ntpc.gov.tw

田中哲也Facebook
https://www.facebook.com/tetsuya.tanaka.756

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